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キーボディスト目線でケーブルについてかく語りき

フォンケーブルやってみた工房
この記事は約21分で読めます。

「踏めるキーボードミキサー」Key-Largoを使ったシステムを組むにあたって各種ケーブルを作ってみましたが、ケーブルの話だけで酒のつまみにもなるし、はたまた喧嘩の元にもなるほど奥の深い話です。

今までもオーディオの側面、楽器の側面から「よいシールド、ケーブルは何か?」を色々調べたりしていました。今回ケーブルを作りにあたり改めて調べ直したことも含めて、個人的な見解をずらずらっと書いてみたいと思います。

尚、本記事の内容はキーボディスト目線で書いております。
ギターやベースの場合、プレイヤーによって好みの音であったり、その現場にあった音を作る事から、強調したい周波数帯域というのが出てくると思いますが、ギターシールドやベースシールドは素線や被覆の素材選定、厚さなど作り方でその楽器に合ったチューニングが施されていることが多いので、本記事内の材料セレクトをそのままギターやベースなどに使用すると「味気ない」とか「パワーが無い」とか「高域が耳につく」等の評価になるのではないかと思います。

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シールドの選定について

私はモノラルのTSケーブルも4芯のマイクケーブルで作っています。理由としては以下の通り

  • カッド構造で2心マイクケーブルでは防ぎきれない電磁ノイズにも効果があり、受けるノイズは1/10以下
  • 4芯あるので導体面積を稼げる
  • お気に入りのケーブルが決まってしまえば、そのケーブルで多用途にケーブルを作れるので100m巻きで買いやすい。
  • 2芯ケーブルと比べてさほど単価差が無い

電気抵抗は胴体の長さに比例し、断面積に反比例する。並列につなぐことで合成抵抗となって抵抗値が下がる。
だから、4芯のマイクケーブルで2芯ずつ撚って作ったモノラルシールドを作るのは伝送損失が下がるので理にかなっている。と思う。
このつなぎ方が原因でループノイズが発生するのではないかと危惧したけど、ロシアのハイエンドケーブルメーカーである、TCHERNOV CABLE(チェルノフケーブル)やオヤイデ電気でも同様の構成のケーブルを発売しているのでそこは問題ないのかな、と思います。

その中でも私はMogami2534をセレクトしています。理由としては以下の通り。

  • レコーディングスタジオの定番ケーブル
  • どのレビューを見ても「癖が無い」という評価
  • 静電容量が単価の割に低いクラスにいる
マイクケーブルとして業界定番のケーブルです。 全体的にバランスが良く、クリアーなサウンドです。オーディオケーブル、ギターケーブルとしてもご利用いただけます。

キーボードとPA,レコーディングに関しては原音に忠実な出音を目指すのが良いのではないか、というのが持論です。
キーボードの場合はどんな楽器の音も出る、曲によって全然違う音に切り替えるので、再生されるレンジが非常に広いことから出来るだけフルレンジをカバーしたい。

そこに周波数特性に癖が出てくると、ヘッドホンで聞いて作ってきた音と音質がまるで違うなんてこともよくあるので、周波数特性も横並びの癖無しが良い。
そして音抜けを良くするためにS/N比を極力下げたい。
そんな都合のいいスペックを極力安く上げたいw

そんな考えから色々選定した結果、Mogami2534に行きつきました。

癖が無いことから、他ケーブルと比較する場合にこのケーブルがリファレンスケーブルとしても役に立ちます。基準となる原音がどんなものかが分からないと比較できないですからね。

ケーブルの長さについて

ケーブルは基本「短ければ短い方が良い!」という鉄則がありますが、どのくらい短い方が良いのか?ちょうどいい論文があったので引用します。

可聴帯域の上限である 20kHz では 4m の場合は 0.1dB 以下の減衰で問題にならない。30m の場合も 1dB 以下の減衰なので聴いてわかるような差は生じないと思われる。また、4m の場合、表皮効果と自己インダクタンスの寄与の差はあまり大きくないが、30mでは L の寄与が支配的になることがわかる。さらに、100m らい引き回す場合は 20kHz では-2dB 程度の減衰となるので、自己インダクタンスの小さな 4 芯線、いわゆるスターカッドケーブルを使用することが推奨される。

「ケーブルの電磁気学」
http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/13904emtheoryofcable.pdf

たかだか5m程度でガタガタ言うんじゃねぇ!(#゚Д゚)って事ですかね。あと、ケーブルでの減衰は高域から始まるんですね。
とはいえ、足元に線が一杯ゴロゴロしているのは見た目としてスッキリしないので、適切な長さにしておいたほうが良いと思いますが、
「3mと5m、どっちの音質が良いか?」という議論より、どこのケーブルを使うか、の方が大事だということは分かりました。

また、同論文にはこんな記述も。

楽器側にある音量調整用のボリューム(摺動抵抗)の抵抗値が 200~500 kΩときわめて大きいくこれが Rampとして働き、R-Cによる減衰が大きくなるからである。20kHz では-6dB(1/2)、10kHzでも-2dB程度減衰するので、音質にケーブルの影響が出るかもしれない

「ケーブルの電磁気学」
http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/13904emtheoryofcable.pdf

この理屈を考えると、ギターからポッドを取り除いてピックアップからジャックに直結させているギタリストが結構いるのも頷けます。
けどギターの場合は、そのポッドの減衰も含みでその個体のサウンドになっていることも考えられるので、直結したらキンキンするようになったってことも考えられますね。
ちなみに、ジミヘンのサウンドはカールコードを使うことでMidがブーストされた音になっている、という説もあるようで。この世界もなかなか面白いです。

ジャックの素材の最適解は?

ケーブルについては個人的最適解を見つけましたが、次はジャック端子自体の素材は何が良いのか?

流石に楽器とケーブルの接点は避けて通れないので、フォンジャックで損失を一番抑える方法を考えると
端子は金メッキ?ニッケルメッキ?それともロジウムメッキ?メッキなし?という話になってきます。

自宅のオーディオですとメッキなしの真鍮が一番とか金メッキに限るとかいろいろな意見があります。

金メッキ、確かに売ってるし魅力ですが剝がれやすいという欠点もありますし、24Kメッキで無いと逆に導電性が悪いという話もあります。

ホスピタルグレードの高級コンセントとかでもニッケルメッキが普通に使われてますし、メッキなし真鍮のフォンジャックとか先ずお目に掛かりません。それにメッキなしとなれば、サビに弱いと思われるので、後々の劣化で導電性が落ちていくと考えられます。

こと楽器演奏、という観点で考えると抜き差しが多いし、様々な環境で使用されるので、耐久性、耐腐食性、コスパを優先して考えると、フツーに売ってるニッケルメッキで良いのではないかと思います。

そのフツーなニッケルメッキでもっと損失を抑える方法として、コンタクトオイルを使う方法があります。
いわゆる「接点復活剤」なんですが、大事な成分は「α-オレフィン」という界面活性剤。
これが接点に薄く乗ることで、普段はオレフィンが汚れや酸化から接点を守る保護層となります。
そして端子に接続されると接点で保護層が押されて生身の接点同士がくっ付いて導電する、という原理で新品同様の伝導性を長く保てます。

その他、とある界隈で一時期はやった方法に「端子を鉛筆でこすると音が良くなる!」というもの。コンタクトZという名で一時期はやりました。
恐らくは鉛筆の黒鉛とカーボンが導電率を向上させるのと、端子の汚れがこすったことで取れたからではないか、というのが個人的な見解ですが、
実際、SettenNo1というコンタクトオイルにはカーボンが少量含まれており、抵抗値が下がることを実験で証明していた人もいました。

ということで、個人的に思いついた導電性を上げる技。比較検証をしていないのでプラシーボ効果止まりですが紹介しておきます。

  • 新品の開封時点で接点部分を鉛筆で軽くこする。(HB辺りが良いと別サイトで紹介があった)
  • 接点復活剤を軽ーく付けてきれいなウェスで乾拭きする。(余分な量を取り除くため)

これで保護膜に少量のカーボンが混ざって導電性を上げつつ保護膜形成を安い材料費でできるのでは?という願望です。
多分溶け込んでいるカーボンの粒子の大きさとかが格段に違ったり、別の成分が余計だったりと、専門家からはツッコミどころ満載のような気がしますので、
お金ある人はSettenNo1の方が上記条件をしっかり押さえた形で市販しているので購入をおススメします。

ソルダーレスははんだ付けより音がいいのか?

次に避けて通れない接点がケーブルとジャックの接合部分。

標準的な接合方法ははんだ付けなのですが、はんだ付けによってスズとか鉛が入った合金を経由するより、同じ素材同士で直接固定して繋いだ方が損失が少ないんじゃないか?という仮説が思いつきました。
それを実現した工法はソルダーレスケーブルが該当すると思います。ジョージエルスがソルダーレスですね。

ただ、接触面をミクロの世界で見ると先程の仮説は覆されます。

はんだは抵抗値を増やす?

ミクロレベルで導体の表面を見てみるとそれこそミクロ単位で凹凸があるので、触れる部分、触れていない部分が点在します。
そうすると、触れている部分のみが電気が通れる道となるので、わずかですが導通の効率は落ちます。
また、接続部分が動けば接触面の位置も都度変わることになり、あまり気持ちのいい状態ではないと思います。

一方、はんだ付けの場合ははんだを媒介として合金になる為、全てが接触面となり、電気が通れる道はフルオープンです。
不純物等で100%とは行かないかもしれませんが、接触面の差は大きいと思います。
ちなみに、はんだの抵抗値≒17μオームcmと言われています。意識するほどの抵抗値ではないようです。

ソルダーレスはフォンジャックの形状でHotと接続、Coldもジャックをかしめることで被膜を突き破ってケーブルのColdに接触させる構造です。
だと接触面が分散、点在することになる。となると接点が増えることになるので、抵抗値から考えると導通経路で接点は極力減らした方が有利に働くことから、ソルダーレスは若干不利かな?と個人的には考えます。
ただし、差し込んでかしめるだけでケーブルが作れる、という加工のしやすさがソルダーレスの売り。パッチケーブルの作成で重宝します。

ここまで書くと、ジョージエルスファンに怒られそうな内容なのですが、ジョージエルスのシールドは静電容量がとても小さいのでケーブル自体の性能はハイ落ちしない良いケーブルと言えます。はんだ付けしたら最強なのかな??

ちなみに、先程のはんだの理屈から考えると逆のように思えるのですが、圧着端子による接着の方がはんだ付けより抵抗値は少なくなるそうです。
電線の表面の酸化膜とコンタクトの表面の酸化膜とが摩擦により剥がれたうえで潰された格好で接触するためなのだそうで。
但し、正しい圧力が掛からないと抵抗値は上がります。
フォンジャックの作成では圧着端子は関係ないですが、もしオーディオ関係でスピーカーと接続する場合や、どうしても線の延長が必要な場合などには参考になるのではないでしょうか。

シールドの部分の処理について

シールドは片側だけColdに落とせ!という技について

「静電シールド線は片側のみColdとシールドを繋げるのがノイズを落とす配線方法、片や電磁シールド線は両端をColdに落とすのが基本」というのが計装の世界では謳われています。

1芯のギターシールドとかは静電シールドの可能性もありますが、オーディオ用は恐らく大体電磁シールドケーブルだと思われます。そこは各メーカーの仕様で分かると思います。
オーディオ界隈で「片側シールドでノイズ低減!」とか「片側シールドはオカルト!」とか情報が錯綜しているのは、静電シールドと電磁シールドの話がごちゃ混ぜになって流布されているのが原因なのかな?と思います。

オーディオ業界では未だに片側シールドの伝統が残っているがこれは悪しき習慣、とNeveのミキシングデスクの回路を設計したキース・アームストロングさんが実験したうえで言っているので間違いないかと思います。

はんだについて

これも掘り出せば深い話です。どのハンダが一番音が良いのか?そもそも、はんだで音は変わるのか?という話。

実際、ホームセンターで糸はんだを探してみると「音響用」と名の付いたはんだが市販されていたり、はんだ別の音の聴き比べをしている人などいろいろあります。

個人的には「不純物が少なくて作業しやすければOK!」と思います。

鉛フリーはんだを使用したこともありますが、安物はんだごてではまずうまく付けられません。普通のヤニ入りはんだより沸点が高いのでうまく濡れてくれないのです。鉛が入っていないので環境には良いということですが、イコール音質がよいとはなりません。オーガニック食品が全て好みの味ではないのと同じだと思います。

ちなみに私の勝負はんだは日本アルミットのKr-19RMAです。

ヴィンテージなKesterのはんだが根強い人気ですが、これはギター界隈の方々に特に重宝されているようです。ヴィンテージな機材には、その楽器の生年月日に近い部品のコンディションのいいものを使用する、若しくはそれを再現した部品を使用することで、その楽器が生まれた頃のコンディションにするというのが主目的の場合、ヴィンテージなはんだはとても有用なのではないでしょうか。

私が今作成する場合は原音を忠実に出せるケーブルを目指しているので、少量でしっかりくっ付いて、内部にゴミが無い状態が理想となります。

システムの音質は信号が最も変質する場所=一番悪い部分で決まるとされます。手作りの場合、はんだの接合点が一番自分の手がかかる部分で一番悪い場所になりやすい。はんだ付けの腕もありますが、はんだも作業しやすいものを選びたいものです。

Q:けどそれってプラシーボじゃね? A:ああ、聞いてるだけならな。

とはいえ正直な話、聴感としては劇的に変わるとは思えないです。一種のプラシーボ効果と言われます。

但し、これは「聴く」場合の話。CD再生の場合は44.1KHz/16bitからの再生なので、その変化がわかりづらいと思います。ハイレゾは192KHz/24bitなので、しっかり再生できる環境があれば違いが感じられるのかもしれません。

楽器演奏の場合はちょっと勝手がちがうと思います。

キーボードの場合、一部サンプリングであるとはいえそれはその音色の特徴。演奏することが主目的なので基本的には生音と見做していいと思います。更にバンド内で演奏するとなれば、なりなりの大音量になります。

そこに弾く会場のホールリバーブとお客さんがいて、、、となれば、その出音も良くしたいと思うのがバンドマンの性というものではないでしょうか。

プラシーボ効果の部分が多いことを自覚しながらも、自分なりの研究の上でベストな音が出せるなら、それはステージ上での自信、パフォーマンス向上に繋がりますし、その音で自分がアガればお客もアガるかも。


いい音を出したい、と思ったら一つの方向性として参考にしてみてください。

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