先日購入したキーボードミキサーの"Key-Largo"をメインにシステムを組み始め、前回はステレオフォンケーブルを作成しました。
今回制作するのは2対ボリュームペダルとKey-Largoをステレオのセンドリターンで繋ぐYケーブルです。
Yケーブルとは
片方はTRSジャックのステレオ仕様で1本、もう片方はLチャンネルとRチャンネルのTSジャック2本に分岐するケーブルで、見た目がそのまんまアルファベットの「Y」の字だからこう呼ばれています。
ちなみに、TRSは端子部分の名称の頭文字を取ったもので、意味は以下の通り。
頭文字 | 読み方 | どの部分? |
---|---|---|
T | Tip チップ | 端子の先っぽ。Hot |
R | Ring リング | チップの下、絶縁体で囲まれた金属部分。極性は用途による |
S | Sleeve スリーブ | 端子根っこの金属部分。ColdだったりGNDだったり |
TSはリングがないので2極のモノラル仕様です。最近流行りの4極仕様はリングが1つ増えるのでTRRSジャックなんて呼ばれたりしてます。
ヘッドホンジャックなど、ステレオ仕様の出力からLチャンネルとRチャンネルに分ける必要がある場合や、ミキサーのようにLチャンネルとRチャンネルが別端子の場合に使用します。
Yケーブルは、別名「インサーションケーブル」とも言います。YAMAHAのミキサーなんかにはよくついている「Insert端子」で使います。
プリフェーダーでエフェクトを掛けたい時にInsert端子にTRS側、エフェクタの入口にLチャンネル、出口にRチャンネルのジャックを挿すことで各チャンネルのゲインからフェーダーに入る手前にエフェクターを差し込むことができます。
ただこのYケーブル、探してみるとパッチケーブルサイズの短い商品がホントに少ない。大概1mからのラインナップです。Providenceから15cm、30cmがリリースされているのを見つけましたがなかなかのお値段です。
この特殊なケーブルも前回のケーブルで作成可能です。
資材紹介
ケーブルはステレオフォンケーブルでも使用したMogami2534。
4芯のマイクケーブルなので、ステレオ仕様もこの線で作成できます。どの種類のケーブルでもこの線で作れちゃうので、私は100m巻きでストックしています。
コネクタ側ですが、今回はNEUTRIK (ノイトリック)を使用します。
こちらはバンド、音響関係者にはなじみの深いメーカーだと思います。現場で踏まれても心配のいらない堅牢性と音質の良さは各種レビューの通りです。今回の選定理由は「作りやすさとデザイン」です。
ブッシングは別売りですがノイトリックの場合はカラーブッシングが各色揃っているので、今回はRチャンネルに赤のブッシングを入れました。ビニールテープより断然見た目がいいです。
あと、ノイトリックのコネクタ内部の絶縁体になるカバーは形状が半割なので、先に入れ忘れても後で入れられるところとか便利ですw
コネクタとケーブルをつなぐはんだですが、私が使っているはんだはNASAお墨付きの日本アルミットKr-19RMAです。
それと今回は熱収縮チューブも使用します。
剥いた被覆を二又にした後に改めて被覆するのに使用します。絶縁、保護が主目的ですが、ケーブルの色に合わせた物を使用すると加工部分に違和感なく加工できて見た目がいいです。
ケーブル長を決めてTS側ケーブルの加工をする
今回も必要な長さを見積もって2本の長さを出しておくのが最初の仕事です。今回のポイントは「二又になる部分をどのくらいの長さにするのか」になります。
今回の長さは、Key-Largoから隣のボリュームペダルまでで済むのでパッチケーブル程度の長さで済みました。
二又にする長さが決まったら、その長さ分外側の被覆をはがします。結構な長さになりますね。
ちなみに、外皮を剥く時に使う道具ですが、方々の自作記事やチュートリアルを読んでいると、カッター派、ニッパー派がほとんどかな、と見ておりますが私はファミコンの同軸ケーブル修理の為に小学生の頃から「はさみ」でやってきました。
はさみを外皮に甘噛みさせた状態でクリクリっと捻るとだんだんに外皮が切れてきます。シールド線にあたると持ち手に伝わる感覚が「ぐにぐに」から「カリッ」に変わるのでそこでストップ。あとは切れ目に爪を立てて「スポッ」と抜けば完成です。何本かシールド線が抜けてしまうこともありますが、かなりの数が編み込まれているのでご愛敬としています。この方法は邪道なので電気主任技術者試験では間違いなく不合格ですが、鍛え上げた技なのですっかり手になじんだやり方となっております。
けど、未だに勢い余って素線を切っちゃう失敗も未だにやるので、ここはひとつケーブルストリッパーを導入したいところです。
話が脱線しましたが、次に二又にするために線を青の線Hot(+)、白、シールドの半分Cold(-)で2組作ります。
ここで、2種類の熱収縮チューブを使います。一つは分けた2組の外部被膜にするために3mm程度の物をかぶせます。もう一つは二又部分をきれいに隠すため、元のケーブルを覆える直径の物を入れます。
ライターとかはんだごての鞘の部分などで熱を加えて収縮させるとそれっぽい見た目に仕上がります。あとは、このケーブルにTSコネクタをはんだ付けしていきます。
前回記事から読んでいる方は繰り返しになりますが、ケーブルにコネクタを付ける際の最初にやることは、スリーブを先にケーブルに通しておくことです。先にこれをやっておかないとコネクタを固定できないことになるので、せっかくのはんだ付けを外すことになります。これほど空しい作業はないですし、あまりヤニ等で端子を汚したくないので、避けたい事態です。
TS側のはんだ付けは、通常のシールド製作と同じです。素線を手でねじって拠ったらはんだを流し込んで両極ともはんだで固め、ちょうどよい長さにニッパーで切りそろえます。
コネクタに予備はんだを落としておいて、下側のColdから繋ぎます。
ノイトリックのHot端子は半割の円筒状になっているので、はんだごての小手先によっては加熱にコツがいりますが、うまく乗せられればきれいな仕上がりになります。
キャップの先端側(尖ってる方ではなく平たい方)が折れるようになっているので、ポキっと折って接合部分にフタをして、カバーとブッシングを締め込めば完成です。
締め付けることで、中のキャップがケーブルの固定と絶縁になるので便利ですね。
TRS側のコネクタ取付
TRS側はさっきより少し難易度が上がります。
まず注意するのは、青の線の片方はTRS側のTip、もう片方はRingに入ります。RingがRチャンネルですので、赤のブッシングを入れたTSジャックのTipとどちらの青の線が導通するのかを確認しておいて、確実にRing端子に繋げないとLRが逆になります。
ここでの付け直しは品質に影響が出てくると思いますので確実にやりましょう。何故なら、
TRS端子の中身はこんな感じ。非常にスペースがタイトです。これのやり直しはキツい。。。
こちらも先ずは線の仕分けから。白2本とシールド、Rチャンネルの青、Lチャンネルの青という3本に拠り分けます。
下のCold端子から順番にはんだ付けします。真ん中の円筒部分がRing、その上に生えてる角みたいな端子がTipです。
TRS端子を作るのは私も初めてで、この狭さにちょっとビビったのでショート防止の為に一工夫。
端子を覆う位のサイズにビニールテープをカット、端子間に挟みこむ感じで貼り付けました。フタをして固定してしまえばそうそうショートすることは無いと思いますが、精神衛生上の保険としてやっておきます。
自作ケーブルでありがちなことですが、音が出ないトラブルに見舞われた時、ケーブルの仕上がりに疑いを掛けるリスクが出てきてしまいます。リスクになる可能性を出来る限り0に近づける努力は本番のリスク軽減にも繋がります。
これをもう一組作成してボリュームペダルとKey-Largoを接続。
以前のシステムから比べると音量調節の印象が「ボリュームを絞った」感じから「フェーダーを下げた」感じに変わり、音抜けも改善されたように感じます。
何よりスッキリした足元となったのが大きいですね。
配線もすっきりして安価に仕上がって性能もよいので、ぜひともトライしてみてください。